私が平瀬君を知ったのは大樹会に参加したのがきっかけでした。

ちょっと不安な気持ちで例会(毎月最終日曜日)の会場に行ったとき、平瀬君はそこに いました。会長の中西さんから平瀬君は視覚障害で視力がないということは聞いていま したので、最初見たときに「あ、あれが平瀬さんだな」と分かりました(その後私の方 が年上だと知って呼び方も平瀬君と変わりましたが)。

でも、彼をみているうち「何か変だな」と思い始めました。なぜなら、視力を全く失っ ている彼が、廊下を挟んだ2つのボランティアルーム、しかも机やイスが並べられてい る部屋の往復を、杖もつかずにしかも普通のスピードで歩いているからです。 彼に後から聞いてみたら、「もう何度も来ているから何処に何があるか頭に入っている から平気だ」とのこと。これにはビックリしました。

その日、家に帰ってから私は居間からトイレまで眼をつぶって歩いてみました。 しかし、手を前にかざしておそるおそる歩くのが精一杯で、とてもあのようには歩けま せんでした。その後彼と栄地下(名古屋の繁華街の地下街)を歩く機会があったのです が、そこでもかれは自分の庭のように歩いて私達を案内するんです。

驚かされたことをもう一つ。これも大樹会の活動中に彼と何気なく会話している中から 気がついたんですが、それは彼が漢字を理解していることです。 確か漢点字の話をしているときのことだったのですが、彼が「例えば『青』という字は 『土』を2つ重ねた下に『月』と書くけど、その場合の漢点字は………」と説明しだし たのです。それを聞きながら、私は生まれて一度も「青」という漢字を見たこともない 彼がなぜ「青」という漢字を理解しているのか、どうやって覚えたのか、頭の中にはど んなイメージがあるのか、色のイメージまでもあるのか、疑問に思うことがいっぱい生 まれました。

まだまだ彼には驚かされます。パソコンにやたらと詳しいこと。エレクトーンはプロ並 みで色々なところでコンサートをする程の腕前のこと(最近はジャズピアノにも凝って いるとか)。

次回から3ヶ月に2回のペースでそんな彼に我々から見た素朴な質問をいくつか投げか けてみたいと思います。このことを通じて晴眼者と視覚障害者の相互理解や視覚障害者 相互の意見交換などが生まれればいいなと思います。 読者の皆さんも晴眼者の疑問にお答えください。お待ちしてます。(ペンネームも可)

大樹会 柿薗良文


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